「変種編集室」とは、人間によって作られた生き物を「変種」と定義し、社会に存在する様々な変種(動物や植物、微生物)について調べ、今と未来における人間と生き物の関わり方を議論する場をつくることを目的としています。
このプロジェクトは、大学で遺伝学を学び、遺伝子にまつわる誤解に違和感を感じた久未可L蔵(くみかえるぞう/現:髙橋室長)と、社会の倫理や矛盾を違った認識で捉えることに興味を持っている現代芸術家のユミソンによって2014年12月に設立されました。それは、テクノロジーと社会を繋ぐ紐をほどいたり、結び変えたりするようなアート活動です。
バイオテクノロジーに対する拒否反応や危機感はどこからくるのだろうか?
「遺伝子組み換え作物ってなんか身体に悪そう」「遺伝子操作された動物ってなんかキモい」「”自然”に反してることって悪いことでしょ?」…生理的な拒否感も強い「遺伝子の組み換え」。私たちは遺伝子を組み換えることへの嫌悪感と向き合うことを試みています。人々が忌み嫌っている生物は、人間が一方的に作ったものです。一方で、知らなければ嫌わないという現実もあります。
日常的に食べるキャベツやブロッコリーは野生では存在しておらず、アブラナ科植物の遺伝子を人工的に改良して生まれた作物です。みんなが大好きなシャイン・マスカットも人の手により作り出されたものである。酵母菌でさえも人工交配している。食物だけでなく、犬や猫、ウマ、家畜など、私たちと一緒に暮らしている動物たちも遺伝子を組み換えられた生物です。
変種編集室は、人類がこれまで農業や産業あるいは文化的な活動の中で生物の形態を変化させてきた歴史に注目し、それらを「変種」と称してスポットを当てていきます。調査活動を通じて、人々の「目に見えないテクノロジー」への拒否感と新たな生き物との関わりを技術的・倫理的側面から考えていきたいのです。
私たちの生活の中には多くの“変種”があります。個人では気づくことのできないレベルで、当たり前に日常生活に溶け込んでいます。変種編集室は、そんな生き物の変化や歴史を調査すします。あるいは未来にどんな「変種」が生まれるかを想像し議論します。「変種編集室」は変種の目線に立って、人間やその社会を見つめ、社会とテクノロジーのあり方を考えたいのです。